退職代行サービスに申し込もうと思っているけど、当日どう動けばいいかがわからないという方は多いです。
「自分は何もしなくていいの?」「会社から連絡が来たらどうする?」「当日までに何を準備しておけば?」——こういった疑問に、この記事で一つひとつ答えていきます。
また、退職代行サービスには弁護士法人・労働組合・民間企業の3種類があり、当日「何ができるか」が運営形態によって異なります。この点も正直にお伝えします。

退職代行を使う前に知っておくべきこと:3つの運営形態の違い
退職代行サービスは「どこに頼んでも同じ」ではありません。運営形態によって法律上できること・できないことが明確に分かれています。依頼前に必ず確認してください。
| 運営形態 | できること | できないこと | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 弁護士法人 | 退職意思の伝達・有給消化交渉・残業代/退職金の請求・損害賠償対応・訴訟対応 | 特になし(弁護士業務として全般対応可) | 弁護士法人ガイア、弁護士法人みやびなど |
| 労働組合 | 退職意思の伝達・有給消化・退職条件などの団体交渉 | 残業代・退職金の法的請求、訴訟対応 | 即ヤメ、男の退職代行、わたしNEXT、オイトマ、ガーディアン、Jobsなど |
| 民間企業 | 退職意思の伝達のみ | 交渉行為は一切不可(非弁行為として違法) | ニコイチ、辞スルなど |
民間の退職代行業者が「有給消化の交渉もします」「残業代の請求もサポート」などと謳っているケースがありますが、これは弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたる可能性があります。2025年10月には、退職代行業者「モームリ」が弁護士法違反の疑いで捜査機関による家宅捜索を受けた事例も報じられました。民間業者を検討する際は、この点を念頭に置いた上でご判断ください。
弁護士法人:交渉・請求まで対応できる
弁護士法人は、退職の意思を伝えるだけでなく、未払い残業代の請求・有給消化の交渉・損害賠償への対応・訴訟対応まですべて弁護士業務として行えます。会社側が「損害賠償を請求する」と脅してきたケースや、残業代が大量に未払いになっているケースでは、弁護士法人が最も安心です。料金は他の形態より高め(5〜10万円前後)になりますが、後から別途弁護士に依頼するコストを考えると合理的な選択です。
労働組合:団体交渉権で有給消化も交渉できる
労働組合が運営する退職代行は、労働組合法に基づく団体交渉権を持っています。民間業者との最大の違いは、「有給消化してから退職したい」「残った給与をきちんともらってから辞めたい」といった退職条件の交渉が法的に認められている点です。料金は2〜3万円台が多く、コストパフォーマンスが高いことから利用者数も多い運営形態です。
民間企業:意思伝達のみ。「交渉」は非弁行為に注意
民間企業が運営する退職代行は、会社への退職意思の伝達のみが法律上許可されています。有給消化や退職金・残業代の交渉は行えません。料金が安め(1〜2万円台)であることが特徴ですが、前述のとおり「交渉もできます」と謳う民間業者には法的リスクが伴います。トラブルの少ない、シンプルな退職(特に交渉が不要なケース)であれば選択肢に入りますが、状況によっては労働組合や弁護士法人を選んだほうが安全です。
申し込みから退職完了まで:全体の流れ7ステップ

- サービスを選んで公式サイトから申し込み(LINE・フォームが主流)
- 担当者とのヒアリング:雇用形態、会社名、上司の名前、在籍期間、有給残日数、返却物などを伝える
- 料金の支払い:クレジットカード・銀行振込・後払い(サービスによって異なる)
- 退職代行当日の実行日を決める:多くのサービスは「翌日以降の希望日」または「即日」に対応
- 実行当日:業者が会社へ連絡(電話・メール・内容証明など)
- 会社からの返答・経過報告を業者から受け取る
- 退職完了の確認・書類の受け取り準備へ
サービスによっては、申し込み当日のうちに全ステップが完了する「即日対応」も可能です。「今日中に辞めたい」という緊急の状況でも対応できるサービスが多くあります。
依頼前日までにやること:準備チェックリスト
退職代行は「全部お任せ」のサービスですが、事前に情報や物品を整理しておくことで、当日がスムーズになります。以下のリストを参考に、前日までに準備を整えておきましょう。
持ち物・貸与品の整理
- 社員証・入館証・IDカード
- 制服・ユニフォーム
- 会社貸与のスマートフォン・PC・タブレット
- 社用車の鍵
- ロッカーの鍵・社印・印鑑
- 会社のクレジットカード・交通系ICカード
- 業務マニュアル・資料(会社の機密情報を含むもの)
これらは後日郵送で返却するケースがほとんどです。当日自宅に持ち帰れるものはまとめておきましょう。
- 給与明細(直近3ヶ月分以上。未払い残業代の確認に使う)
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 有給休暇残日数がわかる書類または画面メモ
- 健康保険証(退職後に返却が必要だが、すぐ手元に置いておく)
- 銀行口座情報(最終給与の振込先確認に使う場合がある)
伝えておくべき情報をまとめる
退職代行業者は、依頼者の代わりに会社と話す際にさまざまな情報を必要とします。ヒアリング時にスムーズに答えられるよう、以下の情報を手元にメモしておきましょう。
- 会社名・所在地・電話番号(代表番号でOK)
- 直属の上司の名前と部署名(連絡窓口になることが多い)
- 雇用形態(正社員・契約社員・パート・アルバイトなど)
- 入社日・現在の在籍期間
- 有給休暇の残日数(わかる範囲で)
- 退職希望日(有給消化を含めた日程の希望)
- 会社から借りているものの有無
- 特記事項(パワハラを受けていた事実、残業代の未払いなど)
会社からの連絡への対処を決めておく
退職代行業者が会社に連絡した後、会社側が直接本人の携帯に電話してくるケースがあります。これは「退職者本人には連絡しないよう」業者が伝えているにもかかわらず行われる場合があり、対処法を決めておくことが大切です。
- 登録外の番号からの電話は基本的に出なくてOK
- 出てしまった場合は「退職代行業者を通してください」とだけ伝えて切る
- LINEやメールへの返信も不要。業者に状況を報告する
- 「出勤しないと損害賠償を請求する」などの脅しは法的根拠が乏しいケースが大半。業者に相談する
退職代行当日の流れ(朝から夕方まで)

退職代行当日は、基本的に自宅で待機するだけです。会社に行く必要はありません。以下は標準的な当日の流れです。
朝:サービスへの最終確認と「GO」の合図
多くの退職代行サービスは、業務開始前(朝8〜9時台)に「今日お願いします」と一言連絡するだけで動き出します。LINEで「お願いします」と送るだけのサービスも多いです。この連絡が「実行開始の合図」になります。
- 退職代行業者にLINE・電話などで「本日よろしくお願いします」と連絡
- 会社には出勤せず、自宅で待機する
- 業者から「会社への連絡が完了しました」の報告を待つ
午前中:業者が会社へ連絡・上司の反応はさまざま
業者が会社(直属の上司や人事部)に電話またはメール・内容証明郵便で退職の意思を伝えます。このとき伝えられる内容は主に以下の通りです。
- 「〇〇さんより退職のご意向をお預かりしております」という意思伝達
- 「本人への直接連絡はご遠慮ください」という要請
- 有給消化の希望(労働組合・弁護士法人の場合)
- 退職日の希望(民法627条に基づき、原則2週間後以降)
会社側の反応は「わかりました」とすんなり進むケースもあれば、「本人と直接話させてほしい」「引き止めたい」という反応が来るケースもあります。いずれの場合も、業者が対応しますので本人が動く必要はありません。
民法627条第1項では、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と定められています。つまり、正社員(無期雇用)の場合、2週間前に申し出れば法律上退職できます。会社が「承諾しない」と言っても、法的には退職は成立します。
午後以降:業者から経過報告を受ける
業者から連絡が届き次第、経過が共有されます。代表的なパターンは以下の通りです。
- スムーズなケース:午前中に会社が受理し、退職日・有給消化・書類送付の流れが確定する
- 時間がかかるケース:会社の担当者が不在・折り返し待ちなどで夕方以降に持ち越される
- 会社が対応を拒むケース:業者が書面(内容証明郵便)で対応。弁護士法人の場合はさらに法的措置も可能
当日に「退職できた」と確認できる状態とは
退職代行当日の「完了」とは、会社が退職の意思を受け取り、退職手続きの流れが確定した状態を指します。具体的には以下のいずれかが確認できれば、当日の対応は完了です。
- 会社から業者を通じて「退職を受理した」旨の返答があった
- 退職日・有給消化の日程について業者を通じて合意した
- 書類(離職票・源泉徴収票等)の送付先が確定した
※ 稀に「当日中に解決しない」ケースもあります。その場合は翌営業日以降も業者が対応を継続します。
退職後に必要な手続き(離職票・保険・年金)
退職代行が完了した後は、退職者本人がいくつかの手続きを進める必要があります。退職代行はあくまで「退職の意思伝達と交渉」を代行するサービスであり、退職後の公的手続きは自分で行う必要があります。

離職票・源泉徴収票の受け取り
| 書類名 | 用途 | 受け取り時期の目安 |
|---|---|---|
| 離職票 | 雇用保険の失業給付申請に必要 | 退職日から10日前後で郵送 |
| 源泉徴収票 | 確定申告・次の職場での年末調整に使用 | 退職日翌月末までに交付義務あり |
| 健康保険被保険者資格喪失証明書 | 国民健康保険への加入手続きに必要 | 退職後1〜2週間以内が目安 |
| 雇用保険被保険者証 | 次の就職先への提出・失業給付申請に使用 | 離職票と同時期に郵送されることが多い |
退職代行利用後、会社が書類の送付を故意に遅らせるケースも報告されています。法律上、会社には交付義務があります(労働基準法22条・所得税法226条)。2週間〜1ヶ月経っても届かない場合は、業者に状況確認を依頼するか、会社の所在地を管轄するハローワークや労働基準監督署に相談してください。
健康保険の切り替え(3つの選択肢)
退職日の翌日から、会社の健康保険資格は喪失します。退職後14日以内に以下のいずれかへ切り替える手続きが必要です(国民健康保険の場合)。
- 国民健康保険に加入する:お住まいの市区町村の窓口で手続き。「健康保険被保険者資格喪失証明書」が必要
- 任意継続被保険者制度を利用する:退職前の保険をそのまま最長2年間継続できる。ただし保険料は全額自己負担(会社負担分もかかる)になるため、一般に国民健康保険より割高になるケースが多い
- 家族の扶養に入る:配偶者や親など家族の健康保険の被扶養者になる。収入要件あり(年収130万円未満など)
国民年金への切り替え
会社員(第2号被保険者)から退職すると、国民年金(第1号被保険者)への切り替えが必要です。退職後14日以内に市区町村の窓口で手続きを行います。収入がない・少ない期間は、保険料免除・猶予制度を利用することもできます(日本年金機構への申請が必要)。
雇用保険(失業給付)の手続き
退職後に仕事を探す予定がある場合、ハローワークで失業給付(基本手当)の申請ができます。
- 手続き窓口:お住まいの管轄ハローワーク
- 必要書類:離職票(1・2)、雇用保険被保険者証、マイナンバーカードまたは通知カード、写真2枚、本人名義の銀行口座情報
- 給付開始までの期間:自己都合退職の場合は「2ヶ月の給付制限期間」があります(会社都合退職や特定理由離職者の場合は異なります)
厚生労働省の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」によると、職場環境の著しい悪化(パワハラ・ハラスメント・長時間労働など)を理由とした退職は「特定受給資格者」または「特定理由離職者」に認定される可能性があります。認定されると、給付制限期間なしで失業給付を受けられる場合があります。ハローワークで相談してみてください。
つまずきやすいポイントとその対処法
退職代行サービスを利用した方が実際につまずいたポイントと、その対処法をまとめます。
| つまずきポイント | 対処法 |
|---|---|
| 会社が「本人と直接話したい」と言い続ける | 業者が「代理人として対応する」旨を伝える。それでも拒否される場合は、内容証明郵便に切り替える。弁護士法人なら法的対応も可能 |
| 当日、会社から何度も電話がかかってくる | 出なくてOK。着信履歴を業者に共有し、状況を報告する。必要に応じて着信拒否設定も検討 |
| 離職票がなかなか届かない | 2週間経過しても届かない場合は業者に確認依頼。1ヶ月超の場合はハローワークまたは労働基準監督署へ相談 |
| 「損害賠償を請求する」と脅された | 退職自体で損害賠償が認められるケースは極めて稀です(過去の裁判例でも、会社側が勝訴するケースは限られています)。即座に弁護士法人へ相談してください |
| 会社への返却物の送り方がわからない | 宅配便(追跡番号付き)または書留郵便で郵送。送付内容のリストを作成し、控えを保管しておく |
| 有給消化を認めてもらえない | 有給消化は労働者の権利(労働基準法第39条)。民間業者では交渉できないため、労働組合または弁護士法人に切り替えることを検討 |
運営形態別:当日サービスがどこまでやってくれるか
最後に、退職代行の「当日の対応範囲」を運営形態別に整理します。「当日何をしてくれるか」の違いが一番はっきり現れるのが実は申し込み後の実行日です。依頼前にここを確認しておくと、選択で迷わなくなります。
| 当日の対応項目 | 弁護士法人 | 労働組合 | 民間企業 |
|---|---|---|---|
| 退職の意思伝達 | ✅ | ✅ | ✅ |
| 有給消化の交渉 | ✅ | ✅(団体交渉) | ❌(非弁行為) |
| 退職金・残業代の請求 | ✅ | ❌ | ❌ |
| 損害賠償・訴訟対応 | ✅ | ❌ | ❌ |
| 会社からの直接連絡のブロック要請 | ✅ | ✅ | ✅ |
| 書類受け取りのサポート | ✅ | サービスによる | サービスによる |
| 即日対応 | サービスによる | ✅(多くが対応) | ✅(多くが対応) |
| 料金の目安(2026年4月時点・公式サイト参照) | 55,000円〜 | 25,000円前後 | 15,000〜20,000円前後 |
- 有給が余っていて消化したい → 労働組合 or 弁護士法人
- 残業代・退職金を取り戻したい → 弁護士法人
- 会社から損害賠償を脅されている → 弁護士法人
- シンプルに「辞めたい意思を伝えてほしい」だけ、かつ交渉不要 → 労働組合(民間業者の非弁リスクを避ける意味でも)
退職代行の利用に迷いがあるなら、まず無料相談(LINEで可能なサービスが多い)だけでも試してみることをおすすめします。今の状況を伝えるだけで、どの運営形態が適しているか案内してもらえます。申し込みは相談後に決めても問題ありません。
※ 本記事に記載の料金・サービス内容は2026年4月時点のものです。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。
※ 本記事は情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な状況については専門家(弁護士・社会保険労務士)にご相談ください。

