仕事を辞める前にすること【お金編】退職前に確認すべき7つの準備

悩んでいる時に確認したいコラム情報

先に結論:お金の準備なしに辞めると後悔する理由

「もう明日にでも辞めたい」と思っていても、お金の準備だけは退職届を出す前に必ず済ませてください。

辞めた後に多くの人が直面する現実はこうです。

  • 失業給付が振り込まれるまで最短でも1〜2ヶ月かかる(自己都合退職なら2〜3ヶ月の給付制限あり)
  • 国民健康保険・国民年金の保険料は無収入でも請求される
  • 住民税が退職後に一括請求されることを知らず、数十万円単位で慌てるケースが続出している
  • 有給休暇を消化しないまま退職し、数十万円を捨てたことに気づく

この記事では、退職の決意を固めた方が「辞める前に確認・準備すべきお金のこと」を7ステップで整理します。退職代行サービスの利用を検討している方向けの追加確認事項もStep7でまとめています。

📋 この記事でわかること
  • 退職前に確認すべきお金の準備7ステップ
  • 失業給付の受給額・期間の試算方法
  • 住民税・健康保険の「後払い地雷」の回避法
  • 有給休暇を確実に消化するための方法
  • 退職代行を利用する場合の注意点
退職前の準備チェックリストのイメージ画像

【STEP 1】有給休暇の残日数を確認する

有給を使わずに辞めると「タダ働き」になる

有給休暇は、労働基準法第39条に基づき、労働者が取得できる権利です。退職時に残っている有給は、退職日までに消化するか、買い取り(会社が合意した場合のみ)してもらうことができます。

仮に有給が20日残っていて、日給が1万5,000円の場合、消化しないまま退職すると30万円を丸々捨てることになります

有給残日数の確認方法

  1. 給与明細・社内ポータル・勤怠システムで確認
  2. 人事・総務担当者に問い合わせる(退職理由を言う必要はありません)
  3. 入社日・勤続年数から法定付与日数を逆算する(下表参照)
勤続年数 法定付与日数(フルタイム正社員の場合)
6ヶ月10日
1年6ヶ月11日
2年6ヶ月12日
3年6ヶ月14日
4年6ヶ月16日
5年6ヶ月18日
6年6ヶ月以上20日(上限)

※有給の時効は2年(付与日から)。最大40日まで繰り越し可能(2023年以降の付与分は3年に延長される方向で議論中)。出典:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

「有給を申請したら嫌がらせが怖い」という方へ

会社が有給取得を拒否することは、原則として違法です(労働基準法第39条第5項)。ただし、現実には「引き継ぎが終わるまで待て」「時季変更権を行使する」と言い張る会社も存在します。

そうした会社と直接やり取りをしたくない場合、退職代行サービス(特に労働組合運営のもの)が有給消化の交渉を代行できます。詳しくはStep7で解説します。


【STEP 2】退職金・ボーナス支給タイミングを把握する

退職金は「もらえる会社」と「ない会社」がある

退職金は法律上の義務ではありません。支給されるかどうかは、就業規則や退職金規程の確認が必要です。就業規則は、会社に請求すれば開示義務があります(労働基準法第106条)。

確認すべき項目:

  • 退職金制度があるか(中小企業では「退職金なし」が珍しくありません)
  • 自己都合退職と会社都合退職で支給率が異なるか
  • 勤続年数による支給額の計算式
  • 懲戒解雇の場合の減額・不支給条項

ボーナスは「支給日在籍要件」に要注意

多くの会社のボーナス規程には、「支給日に在籍している者のみ支給対象」という条項があります。ボーナス支給後に退職届を出す、というタイミングの調整が重要です。

⚠️ よくある失敗パターン
「6月のボーナス前に退職届を出してしまい、査定期間はフルに働いていたのにボーナスをもらえなかった」という事例は非常に多くあります。退職届の提出前に必ずボーナス支給日と規程を確認してください。

【STEP 3】雇用保険(失業給付)の受給額と期間を試算する

失業給付は「すぐもらえる」わけではない

雇用保険(失業給付)は、退職後の生活を守る重要な制度ですが、退職後すぐに振り込まれるわけではありません。

退職区分 給付制限期間 初回振込までの目安
自己都合退職(通常) 2ヶ月(5年以内2回目まで)
3ヶ月(3回目以降)
ハローワーク手続き後
約3〜4ヶ月後
会社都合退職・特定受給資格者 給付制限なし 約1〜2ヶ月後
特定理由離職者(体調不良等) 給付制限なし 約1〜2ヶ月後

出典:厚生労働省「雇用保険制度の概要」(2026年4月時点)

「特定受給資格者」に該当すると有利になる

パワハラ・長時間労働・賃金未払いなど、やむを得ない事情による退職は「特定受給資格者」または「特定理由離職者」として認定される場合があります。この場合、給付制限期間がなくなり、受給期間も延長されることがあります。

認定を受けるには、退職理由を証明する資料(タイムカード、給与明細、パワハラの記録等)をハローワークに提出する必要があります。

受給額の計算方法(簡易版)

基本手当日額の計算式

離職前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180 = 賃金日額
賃金日額 × 給付率(50〜80%)= 基本手当日額

※給付率は賃金日額が低いほど高くなる(低賃金者保護の仕組み)

厚生労働省のWebサイトやハローワークの窓口でも試算できますが、退職に関する相談窓口でも事前に確認しておくと安心です。

雇用保険の仕組みをまとめた図解

【STEP 4】生活費の目安「最低〇ヶ月分」を用意する

次の仕事が決まるまでに必要な現金の目安

退職から次の収入が入るまでの期間は、状況によって大きく異なります。以下を参考に、手持ちの現金を確認してください。

状況 必要な生活費の目安 理由
転職先決定済みで退職 1〜2ヶ月分 収入空白期間が短い
退職後に転職活動(自己都合) 4〜6ヶ月分 給付制限期間+転職活動期間を考慮
心身の回復を優先する場合 6〜12ヶ月分 療養期間が読めないため余裕を持つ

月の固定支出を洗い出す

退職後に増える支出として見落としがちなのが以下の項目です。

  • 国民健康保険料(会社の社会保険から切り替えた場合、前年収入により計算)
  • 国民年金保険料(2026年度:月額16,980円)
  • 住民税(詳しくはStep6)
  • 家賃・光熱費・通信費などの固定費
💡 収入がゼロでも保険料・税金は容赦なく請求される
退職後に無収入になっても、前年の収入に基づく住民税・国民健康保険料の請求は止まりません。「退職したらゼロになる」と思って貯金額を計算すると大きく見誤ります。

【STEP 5】健康保険の切り替え3択を比較する

退職すると、それまで加入していた会社の健康保険(協会けんぽ・組合健保)から外れます。退職翌日から14日以内(任意継続は20日以内)に手続きが必要です。

選択肢 保険料の目安 手続き先 こんな人に向いている
①任意継続
(最長2年)
在職中の保険料の
約2倍(上限あり)
退職前加入の
健康保険組合
前年収入が高い人
(国保より安くなるケースがある)
②国民健康保険 前年収入に基づき計算
(市区町村により異なる)
お住まいの
市区町村役場
前年収入が低い人
収入なしが続く場合は軽減申請が可能
③家族の扶養に入る 保険料の自己負担なし 扶養者の勤務先経由 配偶者・親の扶養要件(年収130万円未満等)を満たす場合

どの選択肢がお得かは、前年の収入・扶養できる家族がいるか・次の転職までの期間によって異なります。最寄りの市区町村窓口やねんきん定期便で事前に試算しておくことをお勧めします。


【STEP 6】住民税の「後払い地雷」を事前に把握する

退職後の家計で最も多くの人を驚かせるのが、住民税の一括請求です。

なぜ退職後に住民税が跳ね上がるのか

会社員の住民税は「特別徴収」といい、毎月の給与から分割で天引きされています。退職すると、その年の1〜5月分の未徴収額が最後の給与または退職金から一括徴収されるか、退職後に自分で納付(普通徴収に切り替え)することになります。

⚠️ 実際にある話:退職月が1〜5月の場合は特に注意
1〜5月退職の場合、まだ払い終えていない住民税の残り分が最後の給与から一括で引かれます。手取りが大幅に減ることがあるため、事前に会社の給与担当者に確認しておきましょう。

住民税の計算タイムライン

住民税は「前年の収入」をもとに計算されます。たとえば2026年6月に退職した場合、2026年6月〜2027年5月に請求される住民税は「2025年(1〜12月)の収入」が基準です。退職直後は無収入でも、昨年の収入が高ければ高い税額が請求されます。

住民税の賦課タイムライン図解

【STEP 7】退職代行を使う場合の追加確認事項

退職代行サービスを利用する場合、Step1〜6に加えて以下を事前に確認しておく必要があります。

退職代行で「有給交渉」ができるのは労働組合か弁護士のみ

退職代行サービスには、運営形態によって対応できる範囲が法律上異なります。これは非常に重要なポイントです。

運営形態 退職の意思伝達 有給消化・交渉 残業代・退職金請求 訴訟・損害賠償対応
弁護士法人
(ガイア、みやびなど)
✅ 可能 ✅ 可能 ✅ 可能 ✅ 可能
労働組合
(男の退職代行、わたしNEXT、ガーディアン、Jobsなど)
✅ 可能 ✅ 可能(団体交渉権あり) ⚠️ 交渉は可能だが訴訟不可 ❌ 不可
民間企業
(ニコイチ、辞スルなど)
✅ 可能 ❌ 法的に交渉不可(非弁行為) ❌ 法的に交渉不可 ❌ 不可
⚠️ 民間業者の「交渉可能」表示には注意が必要です
民間企業(弁護士でも労働組合でもない事業者)が会社との「交渉」を行うことは、弁護士法第72条の非弁行為に該当する可能性があります。2025年10月には、民間の退職代行業者が弁護士法違反の疑いで家宅捜索を受けた事例が報告されています。
有給消化・残業代・退職金の回収を希望する場合は、労働組合か弁護士法人の退職代行を選ぶことを強くお勧めします。

退職代行を使う前にお金まわりで確認すること

  1. 有給残日数と最終出社日の希望を事前に決めておく(退職代行が会社に伝える内容に含める)
  2. 退職届・退職合意書の郵送先(会社の住所)を確認しておく
  3. 健康保険証・会社の備品の返却方法(郵送で済む場合が多い)を確認
  4. 退職金・給与の振込口座が会社に登録されているか確認(給与振込口座と同じなら問題なし)
  5. 離職票の発行を依頼することを退職代行業者に必ず伝える(失業給付の申請に必須)
💡 離職票は「退職代行でも必ず発行してもらえる」か確認を
離職票は、ハローワークでの失業給付申請に欠かせない書類です。退職代行業者に依頼する際、「離職票の発行を会社に求めること」を明示してください。多くの業者は標準対応していますが、念のため依頼前に確認しておきましょう。

退職代行の選び方やランキングについては、こちらのページでも詳しく解説しています。


辞める前日までにやるべきこと・絶対にやってはいけないこと

退職前にやっておくべきこと

  • 給与明細・源泉徴収票の控えを手元に保管(失業給付・確定申告に使用)
  • 雇用保険被保険者証の場所確認(会社が保管している場合は受け取りを依頼)
  • パワハラ・長時間労働の記録をスマホや個人メールに保存(特定受給資格者の認定申請に有用)
  • 業務に関する引き継ぎ資料の作成(法的義務ではないが、トラブル防止のため)
  • 社内ツールのパスワード・アクセス権の整理(退職後のアクセスは不正アクセス禁止法に抵触する可能性あり)

やってはいけないこと

  • 退職後に会社のシステムにアクセスする(不正アクセス禁止法違反のリスク)
  • 同僚や取引先の個人情報・顧客データを持ち出す(不正競争防止法・個人情報保護法違反)
  • SNSに会社や上司の誹謗中傷を投稿する(名誉毀損・損害賠償請求のリスク)
  • 退職を理由に有給取得を拒否されても何もしない(労働基準監督署への申告や退職代行の活用で対処できます)
  • 健康保険・年金の切り替えを後回しにする(未加入期間が生じると、将来の年金受給額に影響することがあります)
退職前チェックリスト(やること・やってはいけないことの対比)

まとめ:お金の準備が、退職後の「自由」をつくる

仕事を辞める前にすべきお金の準備を、7ステップで整理しました。

STEP やること 期限の目安
1有給残日数の確認と消化計画退職届提出前
2退職金・ボーナスの支給タイミング確認退職届提出前
3雇用保険の受給額・期間の試算退職日が決まったら
4生活費(最低4〜6ヶ月分)の確保退職日の1〜2ヶ月前
5健康保険の切り替え先の決定・手続き退職日から14〜20日以内
6住民税の一括請求額の事前確認退職日が決まったら
7退職代行を利用する場合の追加確認退職代行への依頼前

「お金の心配がなければ今すぐ辞めたい」と感じている方は、まずStep3の失業給付の試算とStep4の生活費の確認から始めてみてください。数字を把握するだけで、漠然とした不安がかなり軽くなります。

また、会社と直接やり取りをしたくない・有給消化を認めてもらえるか不安という方は、退職代行(特に労働組合や弁護士法人が運営するもの)の無料相談を活用してみるのも一つの手段です。

退職代行サービスの選び方やランキングについては、こちらの退職代行サービス比較ページをご覧ください。


※本記事の情報は2026年4月時点のものです。法律・制度の改正や各サービスの料金改定により内容が変わる場合があります。最新情報は各公的機関(厚生労働省・ハローワーク)および各サービス公式サイトをご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。