仕事を辞める前にすること【お金編】退職前に確認すべき7つの準備

悩んでいる時に確認したいコラム情報

先に結論:お金の準備なしに辞めると後悔する理由

「もう明日にでも辞めたい」と思っていても、お金の準備だけは退職届を出す前に必ず済ませてください。

辞めた後に多くの人が直面する現実はこうです。

  • 失業給付が振り込まれるまで最短でも1〜2ヶ月かかる(自己都合退職なら2〜3ヶ月の給付制限あり)
  • 国民健康保険・国民年金の保険料は無収入でも請求される
  • 住民税が退職後に一括請求されることを知らず、数十万円単位で慌てるケースが続出している
  • 有給休暇を消化しないまま退職し、数十万円を捨てたことに気づく

この記事では、退職の決意を固めた方が「辞める前に確認・準備すべきお金のこと」を7ステップで整理します。退職代行サービスの利用を検討している方向けの追加確認事項もStep7でまとめています。

📋 この記事でわかること
  • 退職前に確認すべきお金の準備7ステップ
  • 失業給付の受給額・期間の試算方法
  • 住民税・健康保険の「後払い地雷」の回避法
  • 有給休暇を確実に消化するための方法
  • 退職代行を利用する場合の注意点
退職前の準備チェックリストのイメージ画像

  1. 【STEP 1】有給休暇の残日数を確認する
    1. 有給を使わずに辞めると「タダ働き」になる
    2. 有給残日数の確認方法
    3. 「有給を申請したら嫌がらせが怖い」という方へ
  2. 【STEP 2】退職金・ボーナス支給タイミングを把握する
    1. 退職金は「もらえる会社」と「ない会社」がある
    2. ボーナスは「支給日在籍要件」に要注意
  3. 【STEP 3】雇用保険(失業給付)の受給額と期間を試算する
    1. 失業給付は「すぐもらえる」わけではない
    2. 「特定受給資格者」に該当すると有利になる
    3. 受給額の計算方法(簡易版)
  4. 【STEP 4】生活費の目安「最低〇ヶ月分」を用意する
    1. 次の仕事が決まるまでに必要な現金の目安
    2. 月の固定支出を洗い出す
  5. 【STEP 5】健康保険の切り替え3択を比較する
  6. 【STEP 6】住民税の「後払い地雷」を事前に把握する
    1. なぜ退職後に住民税が跳ね上がるのか
    2. 住民税の計算タイムライン
  7. 【STEP 7】退職代行を使う場合の追加確認事項
    1. 退職代行で「有給交渉」ができるのは労働組合か弁護士のみ
    2. 退職代行を使う前にお金まわりで確認すること
  8. 【STEP 8】退職年の確定申告を忘れると損をする
    1. 年の途中で退職すると年末調整が受けられない
    2. 退職者が確定申告で戻ってくるお金の例
    3. 確定申告に必要な書類(退職者の場合)
  9. 【STEP 9】iDeCo・企業型DCは退職前に必ず手続きを確認する
    1. 退職時に放置すると「自動移換」されてしまう
    2. 自動移換のデメリット
  10. 【STEP 10】体調不良で退職する場合は「傷病手当金」を先に確認する
    1. 傷病手当金は「退職後も受け取れる」制度
    2. 傷病手当金を受け取るための3つの条件
    3. 傷病手当金と失業給付は同時に受け取れない
  11. 【STEP 11】転職活動中のお金管理・節約術
    1. 退職後の「見えない出費」を先に洗い出す
    2. 使える公的支援制度を把握する
    3. 転職活動の期間別・お金の目安
  12. 【STEP 12】副業収入がある人が退職前に確認すべきこと
    1. 副業収入があると確定申告が必須になる
    2. 失業給付と副業収入の関係
  13. ケース別シナリオ:あなたの状況に近いパターンはどれ?
    1. 20代・独身・自己都合退職の場合
    2. 30代・既婚・子あり・会社都合退職の場合
    3. 40代・体調不良・メンタル疾患で退職の場合
    4. 50代・副業あり・早期退職の場合
  14. よくある質問(Q&A)
    1. Q1. 退職日は月末と月途中、どちらがお得ですか?
    2. Q2. 有給消化中にアルバイトはできますか?
    3. Q3. 失業給付の受給中に引っ越しをしても問題ありませんか?
    4. Q4. 退職代行を使った場合、離職票はちゃんともらえますか?
    5. Q5. 退職後に国民年金を払えない場合はどうすればいいですか?
  15. 辞める前日までにやるべきこと・絶対にやってはいけないこと
    1. 退職前にやっておくべきこと
    2. やってはいけないこと
  16. まとめ:お金の準備が、退職後の「自由」をつくる

【STEP 1】有給休暇の残日数を確認する

有給を使わずに辞めると「タダ働き」になる

有給休暇は、労働基準法第39条に基づき、労働者が取得できる権利です。退職時に残っている有給は、退職日までに消化するか、買い取り(会社が合意した場合のみ)してもらうことができます。

仮に有給が20日残っていて、日給が1万5,000円の場合、消化しないまま退職すると30万円を丸々捨てることになります

有給残日数の確認方法

  1. 給与明細・社内ポータル・勤怠システムで確認
  2. 人事・総務担当者に問い合わせる(退職理由を言う必要はありません)
  3. 入社日・勤続年数から法定付与日数を逆算する(下表参照)
勤続年数 法定付与日数(フルタイム正社員の場合)
6ヶ月10日
1年6ヶ月11日
2年6ヶ月12日
3年6ヶ月14日
4年6ヶ月16日
5年6ヶ月18日
6年6ヶ月以上20日(上限)

※有給の時効は2年(付与日から)。最大40日まで繰り越し可能(2023年以降の付与分は3年に延長される方向で議論中)。出典:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

「有給を申請したら嫌がらせが怖い」という方へ

会社が有給取得を拒否することは、原則として違法です(労働基準法第39条第5項)。ただし、現実には「引き継ぎが終わるまで待て」「時季変更権を行使する」と言い張る会社も存在します。

そうした会社と直接やり取りをしたくない場合、退職代行サービス(特に労働組合運営のもの)が有給消化の交渉を代行できます。詳しくはStep7で解説します。


【STEP 2】退職金・ボーナス支給タイミングを把握する

退職金は「もらえる会社」と「ない会社」がある

退職金は法律上の義務ではありません。支給されるかどうかは、就業規則や退職金規程の確認が必要です。就業規則は、会社に請求すれば開示義務があります(労働基準法第106条)。

確認すべき項目:

  • 退職金制度があるか(中小企業では「退職金なし」が珍しくありません)
  • 自己都合退職と会社都合退職で支給率が異なるか
  • 勤続年数による支給額の計算式
  • 懲戒解雇の場合の減額・不支給条項

ボーナスは「支給日在籍要件」に要注意

多くの会社のボーナス規程には、「支給日に在籍している者のみ支給対象」という条項があります。ボーナス支給後に退職届を出す、というタイミングの調整が重要です。

⚠️ よくある失敗パターン
「6月のボーナス前に退職届を出してしまい、査定期間はフルに働いていたのにボーナスをもらえなかった」という事例は非常に多くあります。退職届の提出前に必ずボーナス支給日と規程を確認してください。

【STEP 3】雇用保険(失業給付)の受給額と期間を試算する

失業給付は「すぐもらえる」わけではない

雇用保険(失業給付)は、退職後の生活を守る重要な制度ですが、退職後すぐに振り込まれるわけではありません。

退職区分 給付制限期間 初回振込までの目安
自己都合退職(通常) 2ヶ月(5年以内2回目まで)
3ヶ月(3回目以降)
ハローワーク手続き後
約3〜4ヶ月後
会社都合退職・特定受給資格者 給付制限なし 約1〜2ヶ月後
特定理由離職者(体調不良等) 給付制限なし 約1〜2ヶ月後

出典:厚生労働省「雇用保険制度の概要」(2026年4月時点)

「特定受給資格者」に該当すると有利になる

パワハラ・長時間労働・賃金未払いなど、やむを得ない事情による退職は「特定受給資格者」または「特定理由離職者」として認定される場合があります。この場合、給付制限期間がなくなり、受給期間も延長されることがあります。

認定を受けるには、退職理由を証明する資料(タイムカード、給与明細、パワハラの記録等)をハローワークに提出する必要があります。

受給額の計算方法(簡易版)

基本手当日額の計算式

離職前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180 = 賃金日額
賃金日額 × 給付率(50〜80%)= 基本手当日額

※給付率は賃金日額が低いほど高くなる(低賃金者保護の仕組み)

厚生労働省のWebサイトやハローワークの窓口でも試算できますが、退職に関する相談窓口でも事前に確認しておくと安心です。

雇用保険の仕組みをまとめた図解

【STEP 4】生活費の目安「最低〇ヶ月分」を用意する

次の仕事が決まるまでに必要な現金の目安

退職から次の収入が入るまでの期間は、状況によって大きく異なります。以下を参考に、手持ちの現金を確認してください。

状況 必要な生活費の目安 理由
転職先決定済みで退職 1〜2ヶ月分 収入空白期間が短い
退職後に転職活動(自己都合) 4〜6ヶ月分 給付制限期間+転職活動期間を考慮
心身の回復を優先する場合 6〜12ヶ月分 療養期間が読めないため余裕を持つ

月の固定支出を洗い出す

退職後に増える支出として見落としがちなのが以下の項目です。

  • 国民健康保険料(会社の社会保険から切り替えた場合、前年収入により計算)
  • 国民年金保険料(2026年度:月額16,980円)
  • 住民税(詳しくはStep6)
  • 家賃・光熱費・通信費などの固定費
💡 収入がゼロでも保険料・税金は容赦なく請求される
退職後に無収入になっても、前年の収入に基づく住民税・国民健康保険料の請求は止まりません。「退職したらゼロになる」と思って貯金額を計算すると大きく見誤ります。

【STEP 5】健康保険の切り替え3択を比較する

退職すると、それまで加入していた会社の健康保険(協会けんぽ・組合健保)から外れます。退職翌日から14日以内(任意継続は20日以内)に手続きが必要です。

選択肢 保険料の目安 手続き先 こんな人に向いている
①任意継続
(最長2年)
在職中の保険料の
約2倍(上限あり)
退職前加入の
健康保険組合
前年収入が高い人
(国保より安くなるケースがある)
②国民健康保険 前年収入に基づき計算
(市区町村により異なる)
お住まいの
市区町村役場
前年収入が低い人
収入なしが続く場合は軽減申請が可能
③家族の扶養に入る 保険料の自己負担なし 扶養者の勤務先経由 配偶者・親の扶養要件(年収130万円未満等)を満たす場合

どの選択肢がお得かは、前年の収入・扶養できる家族がいるか・次の転職までの期間によって異なります。最寄りの市区町村窓口やねんきん定期便で事前に試算しておくことをお勧めします。


【STEP 6】住民税の「後払い地雷」を事前に把握する

退職後の家計で最も多くの人を驚かせるのが、住民税の一括請求です。

なぜ退職後に住民税が跳ね上がるのか

会社員の住民税は「特別徴収」といい、毎月の給与から分割で天引きされています。退職すると、その年の1〜5月分の未徴収額が最後の給与または退職金から一括徴収されるか、退職後に自分で納付(普通徴収に切り替え)することになります。

⚠️ 実際にある話:退職月が1〜5月の場合は特に注意
1〜5月退職の場合、まだ払い終えていない住民税の残り分が最後の給与から一括で引かれます。手取りが大幅に減ることがあるため、事前に会社の給与担当者に確認しておきましょう。

住民税の計算タイムライン

住民税は「前年の収入」をもとに計算されます。たとえば2026年6月に退職した場合、2026年6月〜2027年5月に請求される住民税は「2025年(1〜12月)の収入」が基準です。退職直後は無収入でも、昨年の収入が高ければ高い税額が請求されます。


【STEP 7】退職代行を使う場合の追加確認事項

退職代行サービスを利用する場合、Step1〜6に加えて以下を事前に確認しておく必要があります。

退職代行で「有給交渉」ができるのは労働組合か弁護士のみ

退職代行サービスには、運営形態によって対応できる範囲が法律上異なります。これは非常に重要なポイントです。

運営形態 退職の意思伝達 有給消化・交渉 残業代・退職金請求 訴訟・損害賠償対応
弁護士法人
(ガイア、みやびなど)
✅ 可能 ✅ 可能 ✅ 可能 ✅ 可能
労働組合
(男の退職代行、わたしNEXT、ガーディアン、Jobsなど)
✅ 可能 ✅ 可能(団体交渉権あり) ⚠️ 交渉は可能だが訴訟不可 ❌ 不可
民間企業
(ニコイチ、辞スルなど)
✅ 可能 ❌ 法的に交渉不可(非弁行為) ❌ 法的に交渉不可 ❌ 不可
⚠️ 民間業者の「交渉可能」表示には注意が必要です
民間企業(弁護士でも労働組合でもない事業者)が会社との「交渉」を行うことは、弁護士法第72条の非弁行為に該当する可能性があります。2025年10月には、民間の退職代行業者が弁護士法違反の疑いで家宅捜索を受けた事例が報告されています。
有給消化・残業代・退職金の回収を希望する場合は、労働組合か弁護士法人の退職代行を選ぶことを強くお勧めします。

退職代行を使う前にお金まわりで確認すること

  1. 有給残日数と最終出社日の希望を事前に決めておく(退職代行が会社に伝える内容に含める)
  2. 退職届・退職合意書の郵送先(会社の住所)を確認しておく
  3. 健康保険証・会社の備品の返却方法(郵送で済む場合が多い)を確認
  4. 退職金・給与の振込口座が会社に登録されているか確認(給与振込口座と同じなら問題なし)
  5. 離職票の発行を依頼することを退職代行業者に必ず伝える(失業給付の申請に必須)
💡 離職票は「退職代行でも必ず発行してもらえる」か確認を
離職票は、ハローワークでの失業給付申請に欠かせない書類です。退職代行業者に依頼する際、「離職票の発行を会社に求めること」を明示してください。多くの業者は標準対応していますが、念のため依頼前に確認しておきましょう。

退職代行の選び方やランキングについては、こちらのページでも詳しく解説しています。



【STEP 8】退職年の確定申告を忘れると損をする

年の途中で退職すると年末調整が受けられない

会社員は通常、毎年12月に会社が「年末調整」を行うことで所得税の過不足を精算してくれます。しかし、年の途中で退職した場合、その年の年末調整は行われません。このため、退職した年の翌年2月〜3月に、自分で確定申告を行う必要があります。

確定申告をしないと「払いすぎた所得税」が戻ってこないため、事実上の損になります。

退職者が確定申告で戻ってくるお金の例

戻ってくる主なケース 概要
源泉徴収税額の過払い分 年の途中退職により年収が下がると、毎月引かれていた所得税が過剰だった可能性がある
医療費控除 年間10万円超の医療費がある場合に適用(体調不良退職の場合は特に確認を)
生命保険料控除・地震保険料控除 年末調整で反映されなかった分を確定申告で申請できる
住宅ローン控除(初年度) マイホーム取得1年目は確定申告が必須
ふるさと納税(ワンストップ特例が無効になる) 退職によりワンストップ特例が使えなくなるため、確定申告に切り替えが必要
⚠️ ふるさと納税をしている人は要注意
退職前にワンストップ特例制度を申請していた場合でも、退職による住所変更・収入変更があると特例が無効になります。翌年の確定申告でふるさと納税の寄附金控除を忘れずに申告してください。

確定申告に必要な書類(退職者の場合)

  • 源泉徴収票(退職した会社から発行。1月31日までに郵送されるのが原則)
  • マイナンバーカードまたは本人確認書類
  • 各種控除証明書(生命保険料・地震保険料・医療費の領収書など)
  • 振込先銀行口座の情報(還付金受け取り用)

※確定申告の申告期間は翌年2月16日〜3月15日(還付申告のみの場合は1月1日から可能)。e-Taxを使えばオンライン完結が可能です。


【STEP 9】iDeCo・企業型DCは退職前に必ず手続きを確認する

退職時に放置すると「自動移換」されてしまう

iDeCo(個人型確定拠出年金)または企業型DC(確定拠出年金)に加入している人は、退職時に必ず手続きが必要です。手続きを怠ると、資産が「自動移換」という状態になり、運用が停止して管理手数料だけが引かれ続けるという事態になります。

現在の状況 退職後の主な選択肢 手続き期限
企業型DCに加入中 iDeCoへ移換 または 転職先の企業型DCへ移換 退職後6ヶ月以内(超えると自動移換)
iDeCoに加入中 掛金の拠出を継続 または 運用指図者として継続 退職後速やかに金融機関へ連絡

自動移換のデメリット

  • 運用が「現金」で固定されてしまい、資産が増えない
  • 毎月52円(年624円)の管理手数料が引かれ続ける
  • 自動移換先(国民年金基金連合会)への移換手数料4,348円が別途かかる
  • 将来の受け取り方(一時金 or 年金)の選択肢が制限される可能性がある
💡 退職前にやること
企業型DC加入者は、退職前に会社の担当部署または運営管理機関(三菱UFJ信託・日本生命・野村證券など)に連絡し、退職後の手続き方法を確認しておきましょう。iDeCo加入者は、加入している金融機関に「転職・退職による掛金停止の手続き」を行います。

【STEP 10】体調不良で退職する場合は「傷病手当金」を先に確認する

傷病手当金は「退職後も受け取れる」制度

うつ病・適応障害・過労・身体疾患など、病気やケガが原因で働けない状態にある場合、在職中から傷病手当金を申請しておくことで、退職後も最大1年6ヶ月(通算)にわたって給付を受け続けることができます。

傷病手当金の支給額(目安)

直近12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3 = 1日あたりの支給額

例:月収30万円の人の場合 → 30万円 ÷ 30 × 2/3 ≒ 6,667円/日
1ヶ月(22日)あたり約14.7万円が支給される計算

傷病手当金を受け取るための3つの条件

  1. 健康保険(協会けんぽ・組合健保)の被保険者であること(国民健康保険は対象外)
  2. 業務外の病気・ケガによって仕事ができない状態であること
  3. 連続して3日以上休んでいること(待機期間3日)
⚠️ 退職後も継続受給するための重要条件
退職後に傷病手当金を引き続き受け取るには、「退職日の前日まで1年以上継続して健康保険に加入していること」が必要です。また、退職日に出勤してしまうと継続給付の条件が切れる場合があるため、退職日の設定には注意が必要です。主治医・社会保険労務士に相談することをお勧めします。

傷病手当金と失業給付は同時に受け取れない

傷病手当金は「働けない状態にある人」向けの給付であり、失業給付(雇用保険)は「働ける状態にある人」向けの給付です。両方を同時に受給することは原則としてできません。ただし、傷病手当金の受給が終了した後、ハローワークに「受給期間の延長申請」をすることで、体調回復後に失業給付を受けることが可能です。


【STEP 11】転職活動中のお金管理・節約術

退職後の「見えない出費」を先に洗い出す

転職活動中は収入が止まる一方、思いがけない支出が増えることがあります。以下のコストは事前に把握しておきましょう。

支出項目 目安金額 節約のポイント
スーツ・面接用の服 1〜5万円 既存のものを活用、クリーニングだけで対応
交通費(面接の往復) 1回あたり500〜3,000円 オンライン面接を積極的に選ぶ、ICカードに切り替え
履歴書・証明写真 1,000〜3,000円 スマホアプリの証明写真(格安コンビニ印刷)で代用可
資格・スキルアップ費用 1〜10万円 ハローワークの「教育訓練給付金」制度の活用を検討
サブスクリプションの見直し 月5,000〜2万円削減可能 使っていないサービスを全解約。まず固定費から見直す

使える公的支援制度を把握する

転職活動中・無職期間中に活用できる公的支援は、失業給付以外にも複数あります。

  • 国民健康保険料の減額申請:離職者向けの軽減制度があり、前年収入の30%で保険料が計算される場合があります(非自発的離職者が対象)
  • 国民年金の免除・猶予申請:所得が一定以下の場合、保険料の全額免除・納付猶予・学生納付特例が利用できます。免除期間も将来の年金受給資格に算入されます(受給額は減額)
  • 教育訓練給付金:ハローワークが認定した講座・スクールの受講費用の最大70%が給付される制度(一般・特定・専門実践の3種類)
  • 住民税の分割納付相談:一括請求が困難な場合は、市区町村の窓口に相談すれば分割払いに応じてもらえるケースがあります

転職活動の期間別・お金の目安

一般的な転職活動の期間は職種や年齢によって異なりますが、以下を参考にしてください。

転職活動期間の目安 必要な貯蓄額(月30万円の生活費の場合)
1〜2ヶ月(在職中から活動していた人) 30〜60万円(+税金・保険料の変動分)
3〜4ヶ月(自己都合退職・給付制限あり) 90〜120万円(失業給付の入金前をカバー)
6ヶ月以上(ブランク期間含む) 180万円以上を目安に(療養・キャリアチェンジ含む)

【STEP 12】副業収入がある人が退職前に確認すべきこと

副業収入があると確定申告が必須になる

在職中に副業(フリーランス・アフィリエイト・ハンドメイド販売・Uber Eatsなど)をしていた人は、退職後の確定申告において副業収入を合わせて申告する必要があります。

特に以下の点に注意してください。

  • 副業収入が年20万円を超えていた場合:会社員であっても確定申告が義務付けられていました。退職年に申告漏れがあると、後から追徴課税される可能性があります
  • 退職後にフリーランスとして独立する場合:開業届の提出(税務署)、青色申告の選択(控除額が最大65万円)、消費税の課税事業者判定(前々年の課税売上が1,000万円超かどうか)を確認
  • 住民税の申告先が変わる:副業収入の住民税を「普通徴収(自分で納付)」に設定しておかないと、会社に副業が判明するリスクがあります。退職後はこの心配は不要になりますが、申告方法は確定申告書で選択しておく必要があります

失業給付と副業収入の関係

失業給付の受給中に副業・アルバイトをする場合は、ハローワークへの申告義務があります。申告なしに収入を得ると、不正受給とみなされ「給付の取り消し+返還命令+最大3倍の罰則」が適用される場合があります。

収入の状況 失業給付への影響
週20時間未満・日額3,788円未満のアルバイト 申告の上で、収入額に応じて給付が減額される(支給停止ではない)
週20時間以上のアルバイト・副業 就職とみなされ、その日は失業給付が支給されない
申告なしに収入を得た場合 不正受給として、給付額の3倍返還命令の対象になる

※日額の基準は2026年度時点。毎年改定されるため、ハローワークの窓口で確認してください。


ケース別シナリオ:あなたの状況に近いパターンはどれ?

20代・独身・自己都合退職の場合

転職活動期間が比較的短く済むことが多く、身軽に動けるのが強みです。ただし、退職後の給付制限2ヶ月間は収入ゼロになるため、最低でも生活費3〜4ヶ月分(90〜120万円)の貯蓄が目安です。

確認すべき優先事項:STEP1(有給消化)→STEP3(失業給付の試算)→STEP5(国保への切り替え)→STEP8(確定申告)

30代・既婚・子あり・会社都合退職の場合

会社都合退職であれば給付制限がなく、比較的早い段階で失業給付が入ります。ただし、子どもの教育費・住宅ローンなど固定費が高い傾向があるため、生活費4〜6ヶ月分の余裕を持ちたいところです。配偶者の扶養に入れる場合は健康保険コストを大幅に下げられます。

確認すべき優先事項:STEP2(ボーナス・退職金)→STEP5(扶養か国保かの判断)→STEP6(住民税の一括請求額)→STEP9(企業型DC)

40代・体調不良・メンタル疾患で退職の場合

傷病手当金を活用することで、退職後も最長1年6ヶ月の給付を受け続けられます。まずは主治医に診断書を発行してもらい、退職前から傷病手当金の申請を開始することが重要です。失業給付は「受給期間の延長申請」で体調回復後に利用できます。

確認すべき優先事項:STEP10(傷病手当金)→STEP4(生活費6〜12ヶ月分)→STEP5(任意継続か国保か)→STEP8(医療費控除)

50代・副業あり・早期退職の場合

退職金の支給額が大きくなるケースが多い一方、再就職に時間がかかりやすい年代です。iDeCoの資産をどうするか、副業収入をどう確定申告に組み込むか、退職金の税務処理(退職所得控除)など、専門的な論点が多くなります。FP(ファイナンシャルプランナー)や税理士への相談も検討してください。

確認すべき優先事項:STEP2(退職金の税務処理)→STEP9(iDeCoの移換)→STEP12(副業収入の申告)→STEP8(確定申告)


よくある質問(Q&A)

Q1. 退職日は月末と月途中、どちらがお得ですか?

A. 社会保険料の観点からは「月末退職」がお得なケースが多いです。

社会保険料(健康保険・厚生年金)は、退職日の前日が属する月まで徴収されます。月末の前日(例:3月30日)に退職すると、3月分の社会保険料が会社負担で払われず、自分で翌月から国保・国民年金に加入することになります。一方、月末(3月31日)退職なら3月分は会社の社会保険に加入したまま処理されるため、1ヶ月分の保険料が節約できる場合があります。

Q2. 有給消化中にアルバイトはできますか?

A. 法律上は禁止されていませんが、就業規則を確認する必要があります。

有給休暇は労働義務が免除される期間であり、その間の行動を会社が制限することは原則としてできません。ただし、競業他社でのアルバイトは就業規則の「競業避止義務」に抵触する可能性があります。退職代行を使って有給消化中の場合は、念のため代行業者に相談してください。

Q3. 失業給付の受給中に引っ越しをしても問題ありませんか?

A. 引っ越し自体は問題ありませんが、ハローワークへの届け出が必要です。

失業給付の受給中に引っ越しをした場合、新住所を管轄するハローワークへ転居の届け出を行い、以後はそちらの管轄で手続きを続けることになります。引っ越しを機に遠方に転居する場合、求職活動の要件(月2回以上)を引き続き満たす必要があります。

Q4. 退職代行を使った場合、離職票はちゃんともらえますか?

A. 依頼時に明示すれば、ほとんどのケースで郵送してもらえます。

離職票は、会社が退職者に発行する義務がある書類です(雇用保険法第76条)。退職代行業者に依頼する際に「離職票の郵送を会社に要求してほしい」と伝えておけば、通常は退職後2〜3週間以内に自宅に届きます。もし届かない場合は、業者を通じて再度請求するか、ハローワークに「離職票不交付申告書」を提出することで対処できます。

Q5. 退職後に国民年金を払えない場合はどうすればいいですか?

A. 免除・猶予制度を活用することで、未納状態を避けることができます。

国民年金の保険料は月額16,980円(2026年度)ですが、退職・失業などにより所得が大幅に減少した場合、「特例免除」として所得要件を緩和した審査が受けられます。免除が認められた期間も将来の年金受給資格に算入されるため(ただし受給額は減額)、未納のまま放置するよりも必ず申請することをお勧めします。手続きはお住まいの市区町村役場またはねんきんネットから行えます。


辞める前日までにやるべきこと・絶対にやってはいけないこと

退職前にやっておくべきこと

  • 給与明細・源泉徴収票の控えを手元に保管(失業給付・確定申告に使用)
  • 雇用保険被保険者証の場所確認(会社が保管している場合は受け取りを依頼)
  • パワハラ・長時間労働の記録をスマホや個人メールに保存(特定受給資格者の認定申請に有用)
  • 業務に関する引き継ぎ資料の作成(法的義務ではないが、トラブル防止のため)
  • 社内ツールのパスワード・アクセス権の整理(退職後のアクセスは不正アクセス禁止法に抵触する可能性あり)

やってはいけないこと

  • 退職後に会社のシステムにアクセスする(不正アクセス禁止法違反のリスク)
  • 同僚や取引先の個人情報・顧客データを持ち出す(不正競争防止法・個人情報保護法違反)
  • SNSに会社や上司の誹謗中傷を投稿する(名誉毀損・損害賠償請求のリスク)
  • 退職を理由に有給取得を拒否されても何もしない(労働基準監督署への申告や退職代行の活用で対処できます)
  • 健康保険・年金の切り替えを後回しにする(未加入期間が生じると、将来の年金受給額に影響することがあります)
退職前チェックリスト(やること・やってはいけないことの対比)

まとめ:お金の準備が、退職後の「自由」をつくる

仕事を辞める前にすべきお金の準備を、7ステップで整理しました。

STEP やること 期限の目安
1有給残日数の確認と消化計画退職届提出前
2退職金・ボーナスの支給タイミング確認退職届提出前
3雇用保険の受給額・期間の試算退職日が決まったら
4生活費(最低4〜6ヶ月分)の確保退職日の1〜2ヶ月前
5健康保険の切り替え先の決定・手続き退職日から14〜20日以内
6住民税の一括請求額の事前確認退職日が決まったら
7退職代行を利用する場合の追加確認退職代行への依頼前

「お金の心配がなければ今すぐ辞めたい」と感じている方は、まずStep3の失業給付の試算とStep4の生活費の確認から始めてみてください。数字を把握するだけで、漠然とした不安がかなり軽くなります。

また、会社と直接やり取りをしたくない・有給消化を認めてもらえるか不安という方は、退職代行(特に労働組合や弁護士法人が運営するもの)の無料相談を活用してみるのも一つの手段です。

退職代行サービスの選び方やランキングについては、こちらの退職代行サービス比較ページをご覧ください。


※本記事の情報は2026年4月時点のものです。法律・制度の改正や各サービスの料金改定により内容が変わる場合があります。最新情報は各公的機関(厚生労働省・ハローワーク)および各サービス公式サイトをご確認ください。
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